特撮と怪獣―わが造形美術

成田亨著。滝沢一穂編。ウルトラマンウルトラセブンなどの怪獣・宇宙人のデザインで知られる著者の半生を振り返る1995年のインタビュー。

特撮と怪獣―わが造形美術

特撮と怪獣―わが造形美術

成田氏はもともと画家志望で、映画やテレビ番組の特撮美術を生業としつつも、自らのアイデンティティはあくまで彫刻家・芸術家にあったようです。そのため大ヒットになったウルトラシリーズのデザインの仕事についてもアンビバレントな気持ちを抱いているのが伺えるインタビューでした。
広く長く愛される独創的なキャラクターデザインを成し遂げたと言う自負と、ウルトラマン=円谷という世間のイメージが強いため(氏は円谷プロ所属ではなくフリーの美術監督だった)正当な評価が受けられない現実への不満を真正面から語っておられます。

(彫刻家仲間が「ウルトラで売れた自分」に対してどう思っているかと言う話で)彫刻家の出世は、あくまでもすばらしい彫刻を作ることなんでしょうからね。映画の美術監督で威張っているようじゃあだめと、彼らはきっとそう思っているでしょう。僕もそう思います。

僕は「おれの怪獣、売れているな」という喜びは感じています。
もしゴッホが生きていたら、日本中どこへ行ってもゴッホの本があるんで、きっとうれしいでしょう。それと同じ喜びだと思います。

映像、音楽、漫画、出版、ゲームなどの世界ではゴーストライターに代表される名前がでない仕事ってたくさんあるのですが、実際やっている人間は程度の差はあれこういうジレンマに悩まされてしまうのかもしれません。理屈では商業と芸術は矛盾しないと思うのだけれども、制作者のモチベーションの持ち方という観点で考えると矛盾点が出てきてしまうのだよなあ。ちょっと身につまされる話でありました。


関連リンク


成田亨さんの仕事
http://www.infosakyu.ne.jp/~yamaken/sfxbooks/narita/narita.html


成田亨 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%90%E7%94%B0%E4%BA%A8