ナウシカ解読―ユートピアの臨界
稲葉振一郎著。先日ようやく漫画版「風の谷のナウシカ」を読んだのですが、実は感想らしい感想を書くことができませんでした。アニメ版に比べて複雑な物語が単純な解釈を許してくれない感じがしていたのです。そこで以前から気になっていたこの本を読んで見た次第。
稲葉さんの本ですからナウシカの単なる作品解説ではなくて、ナウシカの(とくに漫画版の)思想的な到達点について、ロバート・ノージックやハンナ・アーレントを引きながら考察してゆく本です。ナウシカを題材にとった啓蒙書とも言えるかもしれません。
- 作者: 稲葉振一郎
- 出版社/メーカー: 窓社
- 発売日: 1996/02
- メディア: 単行本
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不勉強ゆえに、正直スッキリ理解できた訳ではないのですが(ノージックもアーレントも読んだ事ないですし…)漫画版の、特に後半部の切迫した感覚の正体が何であったのか?という問いの答えを、ボンヤリと感じることはできたかもしれません。あと、10年前刊行で初めての単著ということもあってか、なんとなく著者の若さが感じられるのは楽しいところ。
付録のの宮崎駿のインタビューも面白いですね。痛烈な「火垂るの墓批判」とか「自衛隊は軍隊に」とか「イデオロギーはやめた」とか「映画作りは辛いけど、漫画版ナウシカはもっと辛かった」とか興味深い発言の連続。
あと、本書の元になったテキストが公開されていますね。以下のテキストを一部削除して、大幅加筆修正されたそうです。
ナウシカあるいは旅するユートピア――ロバート・ノージック、笠井潔、そして宮崎駿――
http://www.meijigakuin.ac.jp/~inaba/nou.htm
ノージックについてはちょっとだけ興味が湧いてきました。