就職サイトを中小企業から見ると

議論はもう終わりつつあるとは思うのですが、本田さんのエントリに関連して、少し書いてみようと思います。というのも昨年まで私、新卒採用を担当していたのです。ですから論考ではなく経験談みたいなものですね。


私の勤務先は、従業員数200名弱の中小企業。所在地は関西。ここ数年は毎年十数人の新卒を採用しています。業務の詳細は控えますが、就職サイトで言うとクリエイティブ系に分類される業界で、比較的学歴偏重主義は少ない(なくはないけど)職場だと認識しています。実際、旧帝大出身者だろうと専門学校卒だろうと一緒くたに採用され配属されてます。仕事が始まってからのキャリアも、能力、実績次第となる傾向が強いです。


と、ここまでが前置き。あとはgachapinfanさんの論点整理に沿って書いてみます。

1. 企業がスクリーニングの手段として学歴を用いることは妥当か

1.1. 必要な人材をとるために有効か否か

1.2. 社会にとって問題ないことか否か

1.3. 企業の採用主権の範囲内か否か

1.4. 改善策(または善後策)としては何が望ましいか


中小企業では新卒採用活動のために割く人手や予算が少なく、就職サイトへ求人広告を載せる費用だけでもバカにならないのが現実です。しかも、件のエントリで取り上げられた「企業からの採用案内や企業紹介のメール」を出すには、大抵基本料金のほかにオプションの料金が発生し、送信する毎にお金がかかるのが普通です。また、当然この単価はシェアのある就職サイトほど高くついて負担が大きくなります。


なので、中小企業としてはメールをバラ撒くのではなく、なるべく少ないメールで効果をあげたいと考えるわけです。実際には、就職サイト外の情報ルートのある地元の専門学校など「メールを送らなくても情報が届く層」や、地元以外の高学歴者など「メールを送っても反応がなさそうな層」を除外して、メールを送ることになります。ここでスクリーニングの手段として学歴を用いることを考えるわけですね。


こんな感じで何度か「企業紹介のメール」を使ったのですが、実はあまり効果がありませんでした。メールを出しても出さなくても、私の勤務先では大半の学生が職種、業種による検索からエントリーしていたのです。なので現在では「企業紹介のメール」は使っていません。


理由はおそらく、知名度の低い地方の中小企業を志望するに至るには、メール有無にかかわらず業界・企業研究をそれなりに行なうことが必要で、業界研究をちゃんとやっている志望者はそもそも能動的に調査して応募しているので、メールにあまり効果がない・・・ということではないかと推測しています。もちろん名前を誰もが知っているような企業や、同じ中小企業でも業界によっては随分状況が違うのでしょうが。


私の考えは、企業がスクリーニングの手段として学歴を用いることは採用主権の範囲内であり妥当だけれども、必要な人材をとるために有効か否かというと経験上、否というのもです。企業がスクリーニングの手段として(効果に如何に関わらず)安易に「学歴」というデータを選択しやすいというのは事実なのですが、それが実際のエントリーや選考に与えている影響はかなり少ないだろうなあ、というのが実感です。


個人的にはスクリーニングの問題より、就職サイトの一極集中傾向が気になりますね。学校の就職指導も最もシェアのあるサイトに登録するところから始めるようなので、なかなか市場原理が働かず2番手3番手に逆転の目がないのです。


あと、就職サイトの画一的なビジネスモデルもどうかなあ。今とは逆に学生から金を取り(実際は親から取るのだけれど)企業からは金を取らず、その代わりに業績や待遇を精査して隠れた優良企業、成長企業のみを紹介するサービス・・・なんてのがあってもいいと思うのですが。