姑獲鳥の夏

実相寺昭雄監督作品。京極夏彦のベストセラーの映画化です。好きな監督の作品とはいえ(id:SIM:20040630、id:SIM:20040629)正直アタリハズレがある為、期待せずに観に行ったのですが・・・予想に反して結構楽しめました。
原作が長いので「帝都物語」みたいに物語をすっ飛ばした超速ダイジェストだったらマズイなと思っていたのですが、今回はコンパクトにうまくまとめています。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)


姑獲鳥の夏
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キャストについては不安があったのですが、実際演じているのを観るとそれほど違和感はなかったですね。
中でも関口巽役の永瀬正敏は群を抜いて良かったです。見ていて永瀬が演じているということをほとんど感じさせない辺りに役者としてのうまさを感じました。
あと悲劇と惨劇のヒロイン、久遠寺涼子・梗子役の知世ちゃんもよかったなあ(いやもう彼女もいい歳で結婚もしてるのは知ってます。でも・・・私くらいの世代にとって原田知世は「知世ちゃん」なんですよ!そして高橋幸宏は初老にさしかかっても「ユキヒロ」と呼び捨てなんですよ!)怪しい「令嬢」の雰囲気がうまく出ていたと思います。

京極堂中禅寺秋彦堤真一)、榎木津礼二郎阿部寛)、木場修太郎宮迫博之)あたりは小説のイメージとはちょっと違うのだけれど、映画版としてのキャラクター作りとして、こういう作り方もありだな・・・と思える感じですね。映画の世界に馴染んでました。

逆に小説のイメージに近かったのは京極堂の妹・中禅寺敦子役の田中麗奈と、京極堂の妻・中禅寺千鶴子役の清水美砂清水美砂はちょこっとしか出てこないけど艶があって存在感抜群でした。シリーズになるならぜひ固定して欲しいキャストですね。
おっと女性キャラでは猫目洞のママ役の鈴木砂羽と、黒地に白のブチで足が白靴下ネコも良かったです(女性かどうかわからいけれど)。


肝心の映画の感想ですが、コレはもう冒頭から実相寺ワールドが全開。無数の羽が舞っているシーンから、前衛舞踏のような悪夢の中の姑獲鳥、そして御馴染み魚眼レンズショット・・・と実相寺演出の猛ラッシュです。
真夜中なのにピンスポが当たったり、極端な逆光で撮影したり、障子に絵が映ったりと芝居がかった演出も盛りだくさん、さらには「怪奇大作戦」や「シルバー仮面」でも印象的だった炎上シーン(もちろんミニチュア特撮!)まであるサービスぶりです。私はもうお腹一杯になりました。
例によってカッコイイ建築物、調度品、小道具は実相寺監督らしく「よく見つけてきたなあ」と思える凝ったモノ。京極堂の古本屋のセットなんかはとても雰囲気が出てました。

池辺晋一郎の音楽もとても「昭和っぽい」雰囲気で懐かしい感じをかもし出しているし、オープニングとエンディングで使われている「棄景」で知られる写真家丸田祥三の写真も効果的だったと思います。


丸田祥三写真館 棄景(廃墟・廃線・廃車体)少女、懐かしい町並み・・・
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