漫画に愛を叫んだ男たち

漫画に愛を叫んだ男たち トキワ荘物語

漫画に愛を叫んだ男たち トキワ荘物語

漫画家で赤塚不二夫のブレーンだったid:nagataniさんこと長谷邦夫さんの自伝的小説です。正直にいうと長谷さんのことはハウツー漫画などを書いている漫画家という程度しか 知らなくて、姓も「はせ」と読むと思っていたくらいです。(すみません)
夏目房之介さんのブログと書評を読んで、この本を知り、長谷邦夫さんがはてなダイアラーであることも知りましたが、面白いです!漫画のみならず60年代、70年代のサブカルチャーに興味がある方にオススメします。

呉智英氏が、長谷邦夫「漫画に愛を叫んだ男たち」(清流出版)がイイといっていた。「マンガ仲間の楽しい神話としてのトキワ荘じゃなくて、「裏まんが道」とでもいう哀しさがあっていいんだよ」

さっそく読み始めたら、たしかに面白い。 帯に「小説」と銘打ってあるが、自伝、ドキュメントだと思う。ほとんど実名だし。

若い頃にまんが道トキワ荘の青春などを読んで(映画やテレビドラマもありましたね)ずいぶんトキワ荘に憧れた記憶があります。同じ夢を追いかける若者たちの共同生活、自分もしてみたいなあなんて気持ちも当時はありました。

まんが道 (9) (中公文庫―コミック版)

まんが道 (9) (中公文庫―コミック版)

現在でもある種「若いクリエイターのサロン→成功」のアイコンとして、トキワ荘という言葉が使われていて、検索するとナントカトキワ荘というイベントやら制度やらがたくさんヒットしますね。
この本は赤塚不二夫との出会いから別れまでを、長谷さんの目線から描いています。抑制のきいた日記のような文体で淡々と出来事が書かれているのですが、それがかえって胸に迫ります。読後感は切なくほろ苦い味がします。
時代の記録としてみても面白くて
タモリの発見から、密室芸人時代、メジャーデビューへのエピソード
山下洋輔トリオなどのジャズグループや現代詩グループ、劇団との交流
赤塚不二夫梶原一騎との腕相撲対決(結末は本を読んでください!)
など、この時代の雰囲気を知る資料としても価値のある著作だと思います。