宇宙戦争

予告編が激しく怪獣映画っぽかったので期待していったのですが・・・これが期待以上の「怪獣映画」で、もう大満足の傑作でした。スピルバーグ監督の本領発揮です。トライポッド(宇宙人の巨大マシン)が「吼える」シーンでは鳥肌が立ちましたよ。まるで1954年の「ゴジラ」みたいだ・・・。


宇宙戦争
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この映画も「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」と同じで、あらすじを観客が知っているという前提でストーリーが作られています。大雑把にまとめると
「圧倒的な科学力の宇宙人が攻めてきて人類が滅ぼされそうになるが、とある原因(有名なオチ)で難を逃れる」
とまあそういうお話ですね。記憶が定かではないですが以前に映画化された作品でも、基本的に同じだったはず。(どうもネット上の感想を見ていると、オチを知らない人が肩透かしを食らうという、普通と逆の現象も起きている様子なので、ネタバレ状態で見る方が楽しめるかもしれません)

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オチがわかっているということで、この映画ではそこに至る過程、逃げ惑う人びとに焦点を当てています。普通怪獣映画の主人公たちは、科学者だったり軍関係者だったりマスコミだったりすることが多いのですが、主人公レイ(トム・クルーズ)は労働者階級の一般市民で、特別な能力を持っているわけでもなければ、宇宙人との間に特別の因縁があるわけでもありません。ただただ、よくわからないまま始まってしまった「戦争」に巻き込まれ翻弄され続けます。


この映画が秀逸なのは「戦争」に巻き込まれ逃げ惑う人々を一方的な「被害者」して描いていないところです。善人である筈の主人公(少なくとも悪人ではない)が、これ以上は無い理不尽な暴力(だって宇宙人の侵略なんだもの!)によって、キレイ事では済まない世界に巻き込まれてゆき、ある意味「加害者」的な存在にもなってゆく・・・という過程を丹念に描いているのです。ここでこの映画の奥行きがぐっと増しているように思います。


トム・クルーズも私が今まで見た映画の中で一番良かったです。トム・クルーズ扮する港湾労働者のレイは労働者の仲間内ではそれなりに一目おかれる存在で、スポーツと車が好き・・・ここは私の想像ですが高校時代はモテていて周囲に対しても優越感を抱いているジョックス的な若者だったのでは・・・しかし大人になってみると経済的に困窮、結婚生活は破綻、今では離婚した元妻は自分よりも明らかに上流階級の新しい夫ティムと結婚している。子供たちもティムよりレイは序列が下とみられる始末(うーん書いてて辛くなってきたなあ)・・・自分では「こんなはずでは」と思い続けているダメオヤジいう役がとてもハマってました。
もともとトム・クルーズは「何を演じてもトム・クルーズ」というような俳優で、カッコイイオーラを発散しようとすればするほどカッコワルくなってしまうところがあります。今回は劇中ヒロイックな活躍をする場面も少ない(ちょっとだけあるけど)ですし、スカッとさわやかなラストが待っているわけではない・・・そんな役どころに彼自身がフィットしているのかもしれません。


ところで「テレビ朝日」「セーラームーン」「大阪」はやはり日本市場向けのサービスなのかなあ。