ムハンマドの生涯

アンヌ=マリ デルカンブル著、後藤明監修、小林修・高橋宏訳。1990年刊の「マホメット―最後の預言者アッラーの徴(しるし) 」の改訂新版。イスラム教の創始者ムハンマドの伝記。原著者はフランスの研究者。

改訂新版 ムハンマドの生涯 (「知の再発見」双書)

改訂新版 ムハンマドの生涯 (「知の再発見」双書)

イスラム教門外漢の私にとっては、伝記とイスラム世界の概略を多くの図版を交えつつ解説した読みやすい本だったので、興味深く読むことが出来ました。但し序文で監修者も書いているんですが、「西欧から見たイスラム世界」というバイアスがかかっているのが素人目にもわかるので、別の立場の著者によるもの・・・例えばアラブ人が書いたムハンマド伝なども読んでみたいなあ・・・と思いました。


ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%83%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%95


余談ですが、この監修者の序文が面白いのでちょっと引用してみます。まず原著者の認識について批判してます。

イスラームに対抗するものとして、西欧の「キリスト教世界」があることを、自明の前提としている。この前提は、著者を含む現代西欧の知識人が共有している世界認識の偏差・偏見に基づいている。

この後も著者の偏見についての指摘が続きます。これから読もうという本の序文ですよ。うーん、親切なような読む気をそがれるような・・・複雑な気分になりましたね。「そんなに批判的なのに何で監修したんだよ」などどツッコミつつ読み進むと・・・最後の方で、

にもかかわらず、本書の監修を引き受けたのは、「西欧人」にしては、バランスの取れている著作であるからである。日本人の知性も、多くの場合、西欧の知性の偏差・偏見を超えていないし、時には、西欧のそれを拡大している。したがって、日本人の書いたものの大部分よりは、本書は良質のムハンマド伝となっている。

と、自虐的とも開き直りとも取れるフォローが入ります・・・(うーんフォローなのかなあ)いや、監修者が正直なのには違いないですね。まっすぐさはドーンとよく伝わって来ましたよ。ここで読む気がグッと出てきましたから(笑)