「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画

秋田孝宏著。メディアとしての特性に焦点をあてて書かれた「マンガ」論です。漫画からアニメに連なる表現形式の構造を丹念に読み解いていくところが、とても興味深く楽しめました。

「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画

「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画

前半は、現在に至るまで世界のアニメーション映画の中心である、アメリカのアニメーション産業の発展の要因を、マンガとの関係において探り、両者が一九世紀から二〇世紀の市民社会を背景に、親密な関係を持って誕生し、ともに歩んできた事を明らかにする。(中略)
後半は、現在の日本のアニメとマンガの関係はどのように始まったのかを紹介したのち、日ごろ無意識に鑑賞しているアニメとマンガについて、互いの共通点と相違点はどこにあるのかを見つめなおす事によって、両者の表現の根底にある構造を明らかにすることを試みた。


教科書風の装丁で文章や構成もマジメなので、パラパラとめくった段階では「資料本」という印象だったのですが読んでみて印象が変わりました。特に後半の「アニメとマンガの表現の根底にある構造」について書かれたところが面白いです。それも「へえ〜」とか「あるある」とか、そんな感じの面白さではなくて、「なるほど!」と腑に落ちる論理・分析の面白さなんですね。この理論を発展させてネットなどのほかのメディアを読み解くことも出来そうだと感じました。


マンガ研究関連ブログでも当然ながらこの本はとりあげられてまして、その評もそれぞれ面白いです。このジャンルのブログには面白いものが多いのですが、ジャンルが進展してまさに今歴史が作られている(のを目撃している)ってのがエキサイティングなのかもしれません。

 これはねえ、名著ですよ、名著。こういう本の良さって意外と理解されにくかったりするのかもしれませんけど、名著ですよ、名著。

主に、日本マンガと日本アニメにおける表現の特異性と関係性を論じたもの(という理解でいいのかな)で、特に前者から後者への影響を細かく分析しています。いや、面白かった。

とはいえ、それでも「非常に深いレベル」の「共振」が見られるというのであれば、それはやはり、表現としてのマンガを成立させているメカニズムへの論理的アプローチとして、必然的にそこへ行く、というものであるはずです。

これは俗に言われる「マンガにおける映画的手法」の正体に迫った理論的著作で、マンガ論としては私の知る限り本邦初の画期的な試みである。この本についても語ることが多いので、エントリを改めて近日紹介したい。


あと内容とは関係ないのですが、この本は誤字、誤植、固有名詞の不統一などが多くて気になりました。ボンヤリした頭で読んでいる私が、かなりの箇所発見してしまうとうのはマズイと思いますね。増刷重版の際には改善を望みます。